私は、新製品のアイデアではなく、従来の定番製品での新しい売り方のアイデアを提案します。
2007年より、テレビなどから「1Lの水を買うとアフリカに清潔で安全な10Lの水が供給されます」と発信されて以来、売り上げの一部を社会貢献にあてると明記する企業が当たり前になっていますが、消費の結果という形であり、消費者の立場からすると、目的としては理解できても、そのことが企業を通じてどのような結果になっているのかを「直接実感」できる形にはなっていません。そこで、身近な文具でできないかと考えたのがこの「11本の1ダース」です。
社会貢献=ドネイション。ドネイションというと募金など直接お金を渡すというイメージが強いですが、自分で働いてお金を稼いでいるわけではない子供が、お金という形ではなく、自分の身の回りのもので参加できるものをイメージし、1ダースの鉛筆を選びました。社会貢献の1ダースは11本プラス1本と考え、その1本を買った人からの寄付とします。売れた会社はそのダース分をまとめて社会貢献に使います。1ダースの箱の1本空いた所には、11本で1ダースという意味やどこにどのように貢献するかなどとともに、賛同して購入してもらった人への感謝を添えたメッセージペーパーを入れます。購入するときの選択肢の1つであるので、買う側はその状況によって自分の意志で参加できる上、12分の1本の鉛筆の実感ができます。
2010年末から2011年始めにかけ、タイガーマスク・伊達直人と名乗って児童施設にランドセルなどを送るという良い意味での社会現象が連鎖していますが、そのようなニュースに触れた子供に芽生えたモチベーションを、「子供手当も貰ったことだし」という右から左へのお金という形ではなく、身近なもので実感できる機会があれば、子供も社会の一員という自覚が芽生えるきっかけの一つにもなりえます。また、今定着してきた食育のように、道徳教育の一環ともなれると考えます。
ホームページで定期的に報告することで、この社会貢献のトレーサビリティができ、購入者はいつでもこのムーブメントに参加しているという実感が得られると思います。
社会貢献(相互扶助)はそのシステムが複雑になると、実感が薄れてしまいます。この作品は、それを誰にでも直感で理解できる形にしていることで高い評価につながりました。パッケージの窓の形、メッセージペーパーの入れ方などのディテールが見事です。